今回は株式会社Cheerful pro 代表取締役であり、女性起業家専門コンサルタントとして活躍している橋本 かんなさんにお話を伺いました。女性が起業する際の課題や、どう立ち向かっていくかなど、興味深いお話をインタビューでお届けします。
プロフィール
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株式会社Cheerful pro 代表取締役、女性起業家専門コンサルタント、女性起業家になるためのスクール〜桜〜主宰。関西学院大学経済学部卒業後、就職、留学(ビジネスコース修了)を経て、広告・宣伝業で起業。コンサルティング会社の新規事業立上げ、女性起業支援専門ビジネススクールの立上げメンバーとして参画。前述のスクールでは運営統括部長と講師を兼任。代表理事長の右腕として事業展開に大きく貢献。これまでのイベント・セミナー、研修の運営実績は300を越える。のべ2000人の起業したい又は起業済みで現状打破したい女性と向き合い、毎年100名前後の女性のビジネス構築をサポートしている。好きなものはテニス、落語。一児の母。
“Cheerful pro” 設立の経緯
Cheerful proを設立した経緯を教えてください
元々は大阪で会社勤めをしており、当時は事務職でした。業種は半導体や化学品、プラスチックなど、さまざまな素材を扱っている商社です。
商社を選んだのは、ビジネスの裏側を垣間見るような仕事に挑戦してみたいと思ったから。子どもの頃からそういったものに興味があって、日曜の夜になると父が見ていたビジネス系の番組を一緒になって見たりしていました。ですから、就職するときも「社会に出て思いっきり働きたい!」と、夢を描いて社会人になるんですが、入社して実際にフタを開けたら「うーん……」ということがいろいろあって(笑)。その中でも、当時は特に男性と女性の差を色濃く感じましたね。
私が入社したときの日本は総合職ブーム。どこの会社も足並みを揃えてやっていたのですが、ブームは4、5年で落ち着き、また一般職に区分けされるように。
私の会社でも、何年かして「女性は営業として総合職に残るか、一般職にするか選んでほしい」と、選択を迫られる状況になりました。
その中で、将来結婚して子どもを産んで……と考えている人は出張の多い営業職が難しく、ほとんどの人がキャリアダウンのような形で一般職を選ばざるを得なかったと思います。
このようにすごくアナログな会社の中で、最初は私も試行錯誤したのですが……。求められていないポジションで無理をして道を歩んでいくよりも、会社という「くくり」から出て、何もないところから道を作っていく方が自分には合っているのではと思い、退職を決意しました。
退職後に女性の働き方を探る過程で、当時流行り始めていたフリーランスやノマドという働き方があることを知り、起業セミナーに行っていちから学びました。のちに水谷さんと出会うことになるコンサルティング会社と関わるようになったのも、そのあたりですね。
起業セミナーで学び始めたことをきっかけに、ビジネスの「学び」と「実行」を両輪で回していくことの大切さというのをすごく実感したので、次は組織の中ではなく、自分の力でやっていこうと。それで女性用のビジネススクール「Cheerful pro」を立ち上げ、2023年の1月に法人化しました。
M・Tコンサルティング代表 水谷梨恵との出会い
M・Tコンサルティング代表 水谷梨恵との出会いについて教えてください
最初の接点は、以前在籍していたコンサルティング会社です。私がすでに入社していて、3年目の頃に水谷さんが入社されたと記憶しています。それから1年ほど一緒に働きました。
水谷さんは年上の男性上司に自分の意見をはっきり伝えられる方だったので、見ていてすごく頼もしく感じました。それなのに、物腰はすごく柔らかで。そのギャップも魅力がありましたね。
私が当時、女性起業支援のビジネススクール運営に携わっていたこともご存じで、お互いが独立した後は一緒にランチをしたり、お仕事の話をいただいたりして現在に至ります。
女性起業家支援に特化した理由
女性起業家の支援に特化されている理由はなんでしょうか?
私自身、会社員時代にビジネスの現場における男女の格差を経験したからということも大きいですが、やはり、女性で起業しているロールモデルが圧倒的に少ないというのがいちばんの理由です。
自分もそうでしたが「こんなビジネスをしたい」と起業を目指しても、まわりに同じ目線で相談できる相手がいない。さらに、ビジネスのことを男性と話すときに萎縮してしまう女性がかなり多いんです。相手が難しいビジネス用語を多用してくる人の場合は特にその傾向が強いですね。聞きたいことがあるのに「こんなことを聞いたら怒られるんじゃないか」と、聞けなくなってしまうんです。
その点、やはり同性ならその時点で少し安心感があるのではないでしょうか。当社に来られるお客様も、大半が「女性だから」という理由で問い合わせをしてくれます。私も実務的な部分だけでなく、彼女たちの精神的な部分でも役に立ちたいと思い、女性起業家に特化しています。
また、これも私の経験ですが、これまで男性のコンサルタントやマーケターに色々教えてもらいましたが、受けるアドバイスに違和感があることが少なからずあって。
少し極端な例になりますが、メルマガのアクセスを集めるための施策を相談したときに、大マジメな顔で「水着を着た写真を使ったらいいんじゃない?」という人もいて。男性のコンサルタントが同性の依頼者に「水着を着れば」とは、絶対言わないと思うんですよね。もちろん、そのような人は少数派だと思いますが、こうした過去の経験も現在の女性起業家支援を始めるきっかけになっています。
女性が起業する場合の課題とその解決策とは?
女性が起業する場合に直面する課題や、その解決策について教えてください
フリーランスの方によくある傾向ですが、スキルはあっても「自分の強みが何か」ということにフォーカスしきれていないケースが多いと思います。
そういう方に対しては強みを探す作業として「スキルの棚卸し」を勧めています。自分が好きなことや得意なこと、経験したことで洗い出すと、それらに共通するポイントのほか「気がつけばいつもこういうお客さんがいるな」といった、潜在的なニーズが見えてくるからです。
Cheerful proでは、そうやってスキルをテーブルに並べて、その中で「自分の個性って何だろう?」という課題に対して客観的に見て「こういうところを特化してみたらどう?」といったアドバイスをするようにしています。中にはスキルの特化に成功して、年収が10倍になった方もいるんですよ。
それに加え、コツコツとビジネス知識の習得をして、難解なビジネス用語を繰り出してくる男性たちとも臆せず話せるようになることも大切です。
いわゆる「自分の強み探し」と「ビジネスパーソンとしての基礎体力づくり」の2段階構造で進めていくのが重要だと考えています。
ITリテラシー向上への取り組みについて
ITリテラシーの向上に積極的なのは、今後ビジネスパーソンの基礎体力として重要だからでしょうか?
そうです。元々Cheerful proの起業家支援でもITスキルコースというのを実施していたんです。やはり女性の起業成功のポイントとして、SNSやWebの活用は必須ですから。
次の時代を見据えて、現在はそのITスキルコースをアップデートする形でAIの活用など、より仕事の効率化ができるような勉強会として開催しています。
AIがここまでブレイクした理由として、Chat GPTがある程度一般化したというのが大きいですね。事務的なバックヤードの部分でChat GPTをうまく使いこなすことで、効率よくできる作業が今後もたくさん出てくるはずです。
女性で経営者を目指す人、フリーランスで働きたい人が、日常の業務を効率化するだけで、例えば家事や育児の時間を増やすことができたり、新しい事業にトライできたりと、大きなメリットがあります。そういった活用の仕方を共有していき、レクチャーしていくことで起業にチャレンジする人の裾野を広げたいですね。
M・Tコンサルティングと協業できること、したいこと
今後M・Tコンサルティングと協業するとしたら、どのようなことをしたいですか?
私のビジネスの領域としては女性起業家支援ですが、もっと根本のところで言うと、全ての働く女性をサポートしたいというのが源泉なんです。
その土台づくりとして「これからの女性がビジネス社会でどう振る舞えば成功するのか」という視点でロールモデルを増やしていきたい。そうすることで、きっと未来の女性たちの働きやすさが変わってくると思います。そのようなビジョンのもと、今後M・Tコンサルティングとは、より包括的な女性のビジネス能力アップを念頭に、なにか一緒にできたらと考えています。
個人的には、水谷さんの仕事に対する向き合い方や、働き方についてのマインドを、もっと一般の人たちに伝播させたいです。将来的にはそれを発展させて、働く女性が気軽に先輩女性たちに相談できるメンターマッチングのような仕組みを作れればいいですね。