M・Tコンサルティングのパートナー講師で株式会社MeCoFa 代表取締役、川上重信さんにお話を伺いました。組織開発におけるコーチングの役割、そして「⼈とチームの潜在価値を顕在化する」という考え方についてのお話をインタビューでお届けします。
プロフィール
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川上 重信
株式会社MeCoFa 代表取締役。チームマネジメントと組織マネジメントの実務経験をベースとし、成功循環モデルと経験学習モデルの理論を取り入れたサポートで組織のパフォーマンスを飛躍させるプロコーチ、プロファシリテーター。自分自身が大手企業で製品開発、業務改善、事業企画、販売推進、プロジェクト推進、営業の各部門でマネジメントの実務経験を持ち、その中で部門のビジョンと役割を明確に言語化・可視化して共有すること、それを個人とすり合わせることの大切さを学んだ。自分の職場での経験をベースとし、対象者の想いを引き出し、感情を振り返ることで組織の潜在能力を引き出すサポートをしている。
コーチングが拓く未来について
「コーチングが人の未来を拓くきっかけになる」とはどういうことでしょうか?
そもそもコーチングという言葉に統一的な定義はありませんが、私たちがしていることは、何かを教えたり、アドバイスをしたりということではなく、その人が持っている課題やゴールを明確にして、そこからの行動を変えていく手助けをすることです。
「人の未来を拓くきっかけになる」という表現は、コーチングによって行動変容を起こすことによって、未来を自身の行動で変えていく道筋が拓けるという意味合いで使用しています。
組織開発に関して言えば、グループコーチングやチームビルディングのノウハウを提供していくことと、1on1のコーチングで一人ひとりの意識や行動を変革していくことの組み合わせによって組織全体のパフォーマンスを上げていく……ということ。その結果、やりがいを感じて働く人たち、自分の成長を感じながら働く人たち、そして自分らしさを発揮できるチームを増やしていく活動です。
コーチングとコンサルティングは何が違うのでしょうか?
コーチングは「引き出す」というキーワードに集約されると考えています。コンサルティングはどちらかというと、コンサルタントがもつ情報や知識、ノウハウを「与える」イメージなので「引き出す」か「与える」か、という部分で大きな違いがあると思います。
コーチングは相手の可能性を引き出した結果、どうしたいかをその人自身に決めてもらうことが重要。考えて、行動をしていく過程で、本人の「成長」に焦点を当てているところがポイントです。
例えば、半年後の目標設定をして伴走支援をしていく場合、ただPDCAを回していくだけではなく、その過程で「自分が得られているものは何か」「どのような成長を実感できているのか」ということも深掘りしていくことを意識しています。本人が成長を感じるからこそ、モチベーションを上げて次の行動につなげられるというのが重要だと実感しています。
「⼈とチームの潜在価値を顕在化する」という考え方について
組織開発に必要なこととして、人とチームの潜在価値を顕在化させるという考え方を指針として挙げていますが、そこに至った経緯や想いを教えてください
大企業に所属している時代を含め、これまでのキャリアでさまざまな人や組織を見てきました。よく「2-6-2の法則」と言いますが、組織の中でパフォーマンスを発揮して貢献度が高い人は実質2割しかいない。ただ、そのほかの「パフォーマンスが発揮できていない人」も、なんとなくですが会社への想いはあるし、仕事の質を高めたいと考えています。現場でそのような残りの8割に当たる人々を見てきて、その一人ひとりが自分の価値を知って力を発揮できれば、もっと組織が強くなるのではないかと常々思っていました。
また、チームの潜在価値を顕在化させるということについては、その会社自体に長年培われてきた「暗黙の闇」みたいなものがボトルネックになっている職場が多いということを経験しました。「知らず知らずのうちに誰も触れないようにしている」「あの人の言うことは絶対」といった風土がそうです。どこの現場でも大なり小なり、それが障壁になっていることは少なくないと思います。
私たちはそのような暗黙の闇に入り込んで、ときには人と人の間で板挟みになりながら(笑)、社外の人間だからこそ主導できる変革に取り組み、その裏に隠れている⼈とチームの価値の“見える化”をお手伝いしていく。今はそれが目指すべき組織開発だと信じています。
行動変容につなげるプログラムについて
自己と向き合い、行動変容につなげるプログラムについて重視していることを教えてください
コーチングというのは、基本的に自己と向き合ってもらうプロセスが必須です。私もことあるごとに「あなたはどう感じていますか?」と問いかけるようにしています。
言葉で言うと「メンタルモデル」ということになりますが、個人やチームが持っている思考の特性をまず認識してもらうことが重要です。最終的に「答えは自分の中にある」と気付いてもらうプロセスの発端として、メンタルモデルの認識はしっかりと時間をかけています。
力を発揮できない人の傾向として、根幹的な部分に向き合わず、他人事として考えてしまうところがありますので、自己認識を通して動けていない部分には、自分自身のどんな感情や経験、先入観などが関係しているのか、その人自身に見つけてもらうということをすごく大事にしています。
そのほか、研修時の受講者と講師の距離感も重要です。コーチングの本質は「引き出すこと」なので、受講者にはなるべく受け身ではなくて能動的に考えてほしい。そのために、ワークショップなどの実施時には壇上から話すのではなく、受講者と同じ席に座り目線を合わせて話すなどの工夫をしています。同じ目線、ほどよい距離感で接することによって、本人達が「教わっている」のではなく、講師と「一緒に考えている」という空気感を作り出すよう努めています。
職種、階層別コーチングの有用性
営業向け、育成目線、エグゼクティブ向けなど、階層別にコーチングする必要性について教えてください
先ほど「目線」の話をしましたが、階層別にする必要があるのは「視座」が違うからだと考えています。
例えば、育成目線のコーチングでは本人の仕事にフォーカスしますが、チームリーダーはそこに加えて「自分のチームメンバーをどうまとめていくか」という対外的な視座を持たなければいけません。もちろん、コーチングもその視座からの問いかけをしていきます。
さらに階層がエグゼクティブクラスになってくると、ステークホルダーも広がってきます。そこに対して自分がどう振る舞わなければいけないかをしっかり考えなければいけないでしょう。そして、会社全体がどう動くかについても決めていかなければいけません。その場合はコーチングも「企業理念をしっかり実践できているか?」という視座で問いかけていきます。
営業の方向けのコーチングにはどのような特徴がありますか?
営業に関しては、基本的に成果につなげるためのコーチングになりますが、本質的にはやはり行動変容、いかに行動を増やすかということを焦点にしています。
「どれだけ契約をとったか」といった結果の部分にはお客様の意思決定など、外的要因の影響が大きいので、そこだけ比較しても持続的な成果につながりにくい。どちらかというと、行動を増やすプロセスの中で、自己効力感や自己肯定感を上げていくことの方が大事だと思っています。
オーダーメイド研修がなぜ重要なのか
オーダーメイド研修がなぜ重要なのかを教えてください
従業員の貴重な時間を使って実施する研修は、企業にとって「将来への投資」ですから、我々は投資に見合ったリターンが期待できるプログラムを提供する必要があります。
一方で、組織の持つ課題はそれぞれです。100社あればその分の課題があって、パッケージの研修を当てはめても、役に立つ部分と役に立たない部分が必ず出てきます。そのようなチグハグな研修を実施してしまうと、思ったようなリターンが期待できない。そのために必要なのがオーダーメイド研修だと考えています。
また、研修プログラムを設計する過程で、クライアントが気付いていない本質的な課題が見つかることがあります。
例えば「管理職が自発的に動いてくれないので改善したい」という問い合わせがあり、お話を聞いていくうちに、実はやる気の問題ではなく「企業理念が浸透していないために行動指針を持つことができなかった」といった原因が見つかることもあります。
このように、お話しの中で炙り出される新たな課題に対し、的確なアプローチをするためにはオーダーメイドが効果的であり、長期的視野で見たときに費用対効果が高いと思います。もちろん、プログラムを進める途中でさらに重要な課題の発見があった場合なども、クライアントと相談の上、柔軟にプログラムの再設計をしています。
M・Tコンサルティングとの協業で生まれるシナジーについて
今後M・Tコンサルティングとの協業で、どのようなシナジーが予想されますか?
チーム作りという観点からM・Tコンサルティングとタッグを組んで、クライアント企業のパフォーマンスを内側から向上させていきたいと考えています。
私たちは組織開発の領域において、コーチングによって人やチームに寄り添ったソフト面の対応はできますが、組織の仕組み作りや人事評価制度構築といったハード面については難しいので、その部分に長けているM・Tコンサルティングの力をお借りして、クライアントに対し潜在価値を顕在化させるスキームを持続化・習慣化できるようなサポートができれば素晴らしいと思います。
株式会社MeCoFa HP www.mecofa.co.jp