M・Tコンサルティング代表 水谷梨恵のインタビュー 〜企業が成長する教育体系とは〜 前編をお届けします。M・Tコンサルティングが目指す教育体系づくりや「ひと手間」にかける想いを前・後編に分けてお伝えします。
M・Tコンサルティングが教育で大事にしていること
M・Tコンサルティングが手掛ける教育体系づくりの強みについて教えてください
「社員の人間力を高め、会社の成長を促進させてくれた」
「社員が”考える集団”になった」
「社員教育をお願いしてから、コロナ禍にも関わらず最高益を記録しつづけている」
これらは実際にクライアントの企業様からいただいた言葉です。
私たちM・Tコンサルティングが手掛ける教育体系づくりのストロングポイントはなにか。
シンプルに言うなら「ひと手間」を大事にしているということです。
ヒアリングを丁寧に行うのはもちろん、組織の現状分析や使用しているマネジメントツールの精査など、労力を惜しまず手を入れていく。教育や評価に対して、どのようなツールを用い、どのように仕組み化をしてコミュニケーションをとり、面談をしているのか……ということを全て可視化し、一つひとつテーブルの上に並べていくプロセスを重視しています。
そこまで「ひと手間」を大事にするのはなぜでしょうか
企業側から言われるままを受け取って対処するのではなく、顕在化していない根本的な問題も引き出したいからです。そして、重要なのは可視化を進めたのちに「逆算方式」で考えていくこと。それにあたっては、やはり丁寧にヒアリングしないと目標とする場所(あるべき状態)は見えてきません。経営陣を含め人事・教育担当や管理職、現場社員に至るまで、皆さんの想いや考えをとことん聞いていかないと、一緒に明確なビジョンを描くことはできないと思います。
また、勘違いされる方も多いですが、ヒアリングさえすれば簡単に目標とする場所が見えるわけではありません。起きるコトや問題に対しての意見を交わしながら、様々な対話の積み重ねで見つけていくことの方が多いです。その手間を惜しまずに行動し続けることこそ、M・Tコンサルティングの強みだと考えています。
教育マネジメントがうまくいかないのは何が原因なのか?
教育や評価におけるマネジメントツールでうまくいっていないケースはどのような原因がありますか?
例えば、目標設定管理シートや行動進捗確認書、OJT評価表のようなツールは、上司と部下の両方が「どういった能力を構築できたか」、そしてその「プロセス」が分かるものでないといけません。期間を通じて自分が出した結果・成果、そして、これからの成長を見据えてすべきことが記載されていなければ、機能しているとは言えないと思います。
ただ、実際に拝見すると、フォーマット自体は良くても、
・フィードバックのコメントや使用する言葉が相手の目線になっていない
・上司が部下の成長と心底向き合っていないのが透けて見える
・悪気はないかもしれないが、部下がやる気を失くすような文章や表現が並んでいる
というケースはよくあります。そのほか、上司から「○○をやっておくように!」など、ひたすら命令や頼みごとばかり書いているものもあります。これではいくら研修を行っても人は育ちません。
その仕事をする意味や目的を面談でしっかりと伝え、そもそも誰のために、何のために仕事があるのか、そういった話をしていくことで初めて部下のキャリア・成長に関わっていくことができるのです。
一方、もともと向上心があり、素養を満たしている人は状況に関わらず自身で能力開発をしていきますが、そのような人財はいつか会社を巣立つことになる可能性が高いです。
ほかには、部下の仕事に対してフィードバックをしていない、様々なツールの中に上司のコメント欄が無いというケースもありますが、これはもう論外です。
理由はお気づきだと思いますが、いくつか挙げるなら「評価の帳尻合わせができなくなる」「忙しくてコメントバックが手に余る」「そもそも普段から部下に関心がないから書けない」などなど……。これでは、スキルが限定化してしまいますし、部下の習熟度に合わせて上司の知見やノウハウを授けていかなければ、部下との業務遂行力の差はいつまでたっても埋まることはありません。そうすると、やがて上司自身の成長も行き詰まり、結果的に組織の成長も止まってしまうでしょう。そうなると全ての成長は成り行きや、自然発生的なラッキーに頼るしかなくなってしまいます。
弊社がひと手間かけてでも「モノ」と「ヒト」の両面から是正していくのは、このような小さな綻びが積み重なって、少しずつ組織が機能不全に陥るのを避けるためです。
教育マネジメントをうまく機能させるために、まずは育てる方と育てられる方の両者が「成長」に対して向き合う、そして「何をもって成長とするのか」という、成長の定義を対話によって一致させることも大切だと考えています。そして、継続的に成長していくためには目標と課題をしっかり「視える化」し、行動に移すことが大切です。
教育体系は一度構築したら終わりではない
教育体系を新しく構築するにあたり、企業(人事)担当者が懸念するのはどのようなことがありますか?
多くの担当者の方が気にしているのは「ウチに合うかどうか」「社員に受け入れられるかどうか」ではないでしょうか。
構築に際し、一定の抵抗勢力というのは必ず出てきます。教育が根付くかどうかはその先の話です。ただ、「ウチに合う」かどうかだけで研修内容を考えたり、ツールなどは便宜上このままでいいと妥協したりするのは少し違います。もちろん課題感や組織風土に照らし合わせますが、能力だけではなく人間としての成熟も図っていくという視点は教育体系の構築に必要です。そもそも経営視点で見た際に何かしらの問題が出てきているので、リソースの根幹でもある「ヒト」、すなわち教育体系を見直すことになるわけですが、そこで全てを「ウチに合う」条件にすることで、発展性が加速したり新しく何かを生み出したりする原動力になるとは思えません。
これは経験則ですが、教育体系の見直し・新規導入にあたり、必ず変えていかなければならないことが出てきます。そうなると、変化に対しての覚悟や他者・他部署を巻き込むという行動姿勢は重要となってきます。
「途方もない道のりに思えてきました……」など、ときには不安なメールをいただくこともありますが、我々はしっかりと支えていきます。一心同体となって受け止め、できることを必ずお伝えしています。
すごく手厚くフォローしていくのですね。教育体系は一度構築したら終わりですか?
いえ、1度組み上がったら完成ではなく、見直しは必要です。
働く人の質というのは時代とともに変わっていきます。「1年間はこういう目標でやっていく、2年目はこういうところにたどり着いて、3年目はこう……」と、中長期的視野で考えていても、あらぬ事態というのは起きてきます。もちろん、会社の状況を鑑みていったん短期スパンで構築するなど、柔軟に対応することもありますが、その辺りも全て状況を把握した上で必要に応じて見直しをし、伴走をしていくのが、M・Tコンサルティングの手法です。
弊社が以前、教育体系の構築で入ったクライアントの中に、自社内で教育が回るという状態に想定よりも早い段階で辿り着いた企業がありました。そこには「自分達がいいと思う教育をやってみたい」という強い気持ちで、中途採用教育の企画書を会議で提出していた現場の課長がいました。
このクライアントの場合は、ほかにもヒトの部分について議論していくにあたって「組織風土をまずどうにかしないといけないのでは?」など、対話を重ねることで自然と他人の価値観や意見を受け入れることのできる人が増えていったことも要因だと思います。
M・Tコンサルティングが考える「オーダーメイド研修」
教育体系づくりに最適な研修について教えてください
冒頭に出てきた「ただ研修を組むということが教育体系づくりではない」という話の通り、教育体系は「研修パッケージ」を提供することではありません。そのほかが機能していない状態では、何となくはまりそうな研修を当てはめてもなかなか期待するような成果は出てこないです。
実施する側として型にはめた研修はやりやすいのですが、結局は受講者次第になってしまう。その場では「よかった、ためになった」と感じていただいたとしても、そこに何らかの仕組みがなければ、結局は個人任せとなってしまいます。
教育体系というのは、育成方針、研修、評価、キャリア形成、異動に関する考え方、採用に関する考え方、風土づくりなど、そういうものを1本の「道」にしていくことが重要です。
そのためには「オーダーメイド」という考え方が必要なんですね
はい。当社の研修に関しても本当にオーダーメイドという言葉が当てはまると思います。
Webサイトなどで「オーダーメイド型の研修」とうたっているのを見ますが、よく中身を見てみると既存のフォーマットを応用した「セミオーダー」という感じが否めません。そういったものは元の研修があって、一部をアレンジするような感じでオーダーメイドと言っている印象です。
私たちは教育体系を最大限に機能させることで、組織の根本的な部分からいい方向に変えていきたい。そのためには、いちから作り上げるフルオーダーがいちばん効く手段。そこで手間を惜しんでいません。
教育体系というのは、もはや企業の成長戦略の一環として考えるのが自然です。時間がない、人手が足りない、費用が捻出できないといった理由で後回しにするのではなく、常に経営戦略の中心に位置づけていくものではないでしょうか。