今回は会社初の人事担当者として、人事評価制度の導入に取り組んだ、株式会社石川製作所 大岡 亜希子さんにお話を伺いました。
M・Tコンサルティングのバックアップのもと、どのような組織課題の改善に取り組んだのか、インタビューでご紹介します。
コンサルティングを依頼した理由
コンサルティングを依頼した経緯、その理由を聞かせてください
コンサルティングを導入したいと思ったのは、人事担当としてこれからキャリアを積んでいく上で、一度プロの仕事をそばで見たほうがいいと考えたからです。
入社後、社内に人事担当は私しかおらず、レガシーもノウハウもない状態で四苦八苦しながら人事業務を続けていたので「このままでいいのか」という不安もありました。
それで人事のスキル、特に人事評価という部分に焦点を置いた知識やノウハウをプロから学びたいと思いました。
大岡さんは採用時から人事担当として入社されたのですか?
いえ、当初は経理として入社しました。ですが、入社後に社内の状況を見ていると、人事担当がいないために社内業務が煩雑になっているように感じました。そこで、自分が持っているキャリアコンサルタントの資格を活かして何か役に立てるのではないかと考え、人事担当に名乗りを上げました。それが認められて、今に至ります。
具体的にはM・Tコンサルティングへどのような依頼をしたのですか?
ひと言でいうと「人事評価制度を作るためのサポート」です。私としては、制度ができるプロセスを通してプロの思考、プロの目線、プロの働きを見て、吸収したいと考えていました。ですから、構築から研修までのパッケージでお願いしたいと伝えました。
そこから見積もりを経て、最終的には1年の契約という形で引き受けてくださいました。
導入時の課題とは
コンサルティングによって可視化された課題は何でしたか?
いちばんは「コミュニケーション不足」です。現場の従業員に対し、上司が提示すべき本人の「現在の状況」「求められていること」「課題は何か」ということが伝わっていませんでした。
また、技術習得に関する部分でも大きな課題がありました。
弊社は製造業ですので、いわゆる技能マップがあります。入社後はそれに沿って一定のレベルまで技術を高めていくのですが、ある程度習熟して技能マップを修了すると「独り立ち」という扱いで各自が工夫する領域に入ります。ですが、実態は独り立ちした従業員たちが軒並み「何を求められているのだろう」と戸惑い、ひとまず言われたことを淡々とこなす、または自分なりに工夫や改善をするものの、これで良いのかわからないという状況でした。
そのほか、コミュニケーションに関しては上長と社長との間のコミュニケーション不足、つまり、現場と経営層のギャップという問題もありました。
こういった課題の根本的な原因として、対話不足だけでなく、会社が求める人物像や技術的な基準などが明確化されていなかったことが挙げられます。社長や幹部社員の中でイメージとしてはあったと思うのですが、少なくとも、言葉として明文化されていませんでした。
では、どうやってその基準を決定すればいいのか、そもそも、誰に聞けばいいのか、誰かが提案したとして、それが本当に会社の求める人物像とマッチしているのか……など、照らし合わせる機会もなければ、できる人もいない。それらを手探りで進めなくてはならないというのが課題でしたね。
最初にしたアプローチ
「石川製作所が理想とする人物像」がしっかり定まっていない状態で、最初に取りかかったのはどのようなことですか?
まずは「ひとつの部署の評価項目を作ってみる」ということになりました。それからはその評価項目をひな形に、私がほかの部署のものを作っていけばいいということで。
最初に取りかかったのは、第一生産部という機械部門の項目作成でした。従業員にヒアリングを行いつつ、それにプラスして「この会社で働きたいか」「ほかの人に勧めたいと思うか」などの質問も加え、丁寧に探っていきました。
同じく、弊社の従業員にとってどのレベルの技術が標準なのか、そして、従事する年数に応じてどのレベル以上が付加価値を生み出すのかという、技術習得の「損益分岐点」についても深く掘り下げました。
今回、人事評価制度を作るにあたって、私は難しく考えすぎていました。
弊社は中小企業ですので、大企業のような等級制度があるわけではありません。かといって、評価項目を作る場合、何年もいるベテランと経験の浅い新人とどう差をつけるか……などと思い悩むことが多く、途方に暮れていたときがありました。
そのようなときに「まず大切なのは社内のコミュニケーション不足を解消し、対話をする風土を醸成すること。そこを目標とするのであれば、あまり細かくせず、最初はある程度同じ項目でいいのではないか」とアドバイスをいただき「そうか!」と合点がいきました。
従業員が自分の現在地を把握し、何が足りていて、何が足りてないのか、どうしていきたいのかと、忌憚なく対話ができるような評価ツールであればいいのだと。そのことに気づいた瞬間、スッと気持ちが楽になったのを覚えています。
そのほかに受けたアドバイスにはどのようなものがありますか?
従業員の評価シートに関して「一人ひとりが課題の解決策を思考できるようになるために、自らを振り返って書いてもらうことが大事。書けるということは言語化できるということ。言語化できるということは、頭の中で整理ができるということ。そういう思考を育てるようなシートを目指してほしい」と言われたことが印象に残っています。私は評価シートをつくるときに、従業員にインプットさせることばかり考えていました。ですが、インプットと同じぐらいアウトプットが大事だということを教えられましたね。
導入後の変化について
M・Tコンサルティングと一緒に取り組んだ結果、変わったことはどのようなことがありますか?
評価制度を作るにあたって、上長たちとプロジェクトチームを作りました。最初は「こんな面倒なことをするのか」と、反発されるか不安だったのですが(笑)。
いざ提案してみると、意外と前向きに考えてくれて。最初から「無理!」「できない!」と言われなかったことが、少し驚きでした。
あくまでも推測ですが、上長たちも「何かやらなければいけない」という危機感があったのではないかと思います。人を育てる、または評価制度を設けるということに関し、いつかそこにアプローチしなければ組織が立ち行かなくなると薄々気づいていたのではないかと。ですが、日々の仕事に追われる中で、具体的にどうしていいか分からない……。それで行き詰まっていたのだと思います。結果的にM・Tコンサルティングとの出会いが、組織全体にとっていいきっかけになったのかも知れません。
印象に残るエピソード
これまでに何か印象に残るエピソードはありますか?
水谷さんが絶妙なタイミングでくださるメールやサポートですね。実際、それに救われたことが多々ありました。
コンサルティングの期間中、要件基準や評価項目の内容を固めなければいけないのに、役職者の役割や求める能力をどう設定するか全然決まらないことがありました。会長と社長と私で話してもまとまらないし、案が出てこない。そもそも階層によってどういう差があるのかが分からない。
そのようなときに並行して採用活動がスタートし、忙しくなると分からないことはどんどん後回し。水谷さんからメールをもらっても「今、忙しくて手をつけられていません」と返信することが増えていきました。
いよいよ切羽詰まったときに、またメールが来たので、心が弱っていた私は「もう無理です」「何も考えられません」と返して。そうしたら「少し話しましょうか」と返信がありました。
その後、直接お会いして現状を話し、それからは月に1回、水谷さんのもとに伺って作り方を教えていただきました。役職者の定義についても「こういうのはどうですか?」と弊社にあった案を出してくださって。そのおかげでグッと進みました。私だけではギブアップしていたかも知れないので、本当に感謝しています。
石川製作所の未来について
御社は「縮む水切りラック」といったB to Cの商品を開発されていますが、どのような経緯で製作されたのですか?
全国のプロダクトデザイナーと中小企業を繋ぎ合わせて、製品開発をするAichi Design Visionというプロジェクトがあり、そこでプロダクトデザイナーさんと引き合わせてもらって、一緒に作っています。その第1弾が水切りラックで、現在も新しい製品を考えているところです。
そういった意味では、弊社は新しいフェーズに入ったような気がしています。デザイナーさんだけでなく従業員にもB to C製品のアイデアをどんどん出してもらいたいと考えています。
メッセージ
最後にM・Tコンサルティングへメッセージをいただけますか?
当初、提案してくださった内容からは大きく変わり、また予算も限られている中で、何ができるかというのを真剣に考えてくださったことに感謝しています。
M・Tコンサルティングに出会って、人を育てるには「どれだけその人のことを思うかが大事」ということを学びました。自分が辛いときに言葉やメールから「そばにいるから大丈夫」という気持ちを感じることができ、どれだけ勇気をもらえたか計り知れません。私もこれから関わる人に対してそのような姿勢でありたいと思っています。